
若い人たちが60年代とか70年代のファッションや音楽を追う時代だという。モロその時代にエレキギターなどを振り回していた一人としてはナントモ言うべき言葉はないが(笑)、パソコンだって新しいものばかりが面白いのではないことも知っていただきたい。
Old Macの定義がどの辺の機種までを指すのかについては良く分からないものの1984年に登場したMacintoshを起点に一体型でモノクロモニターの機種は総じて今でも人気があるらしい。しかし量産品としてのパーソナルコンピュータの原点は決してこのMacintoshではなく、Apple Computer社が1977年に生み出したApple IIがそれである。
タイプライタを思わせるベージュの樹脂製ケース。そして8基の拡張スロットを持ち、何よりもカラーグラフィックモードが魅力なこのパソコンは当時大変眩しい存在だった。
とはいえ現在のマシンスペックと比較すればCPUが6502/1.023MHzでメモリは4KB(48KBまで拡張可)という能力はお話しにならないほど貧弱である。しかしその完成度の高さを証明するように、特に米国などでは現在もこのApple IIを実用機として活用している人たちもいるというしApple自身もMacintoshをリリースしてから以降もしばらの間はこのApple IIの販売で利益を上げていた。
過日Apple IIに関わる取材を受けたこともあり、押し入れにしまい込んでいた機器類を久しぶりに取り出して検証する機会を得た。
まあMacintoshの話題ではないが、最近ではあまり見聞きする機会がないこうした話題もたまにはよろしいのではないかと思い、雑談的ではあるが昔話を交えて話を進めてみたい。
ところで残念なことに私の手元には1982年に手に入れたApple II J-Plusというマシンはすでにない。しかしその後に購入した上位機種のApple IIeが2台手元にありほとんどの周辺機器やソフトウェアがそのまま動作するので古いソフトウェアなどを起動するのには十分な環境だと思っている。しかしそのApple Iieにしてもリリースされたのは1983年のことである。一台は外観こそ綺麗なもののどこかが接触不良なのかいたって機嫌がよくないが、もう一台は問題なく動作する。

※筆者所有の2台のApple IIe
またそれ以上にシビアなのがディスクドライブと5インチのフロッピーディスクに収められているソフトウェアだ。しかしdisk IIというApple純正品のディスクドライブ2台も今のところは問題ないし、最近Vintage Computer社から購入したこれまたApple純正のDUODISKという二基のドライブを持った製品も快調である。


※2台のApple純正フロッピーディスクドライブ「DISK II」を乗せたApple IIe(上)と、これまた純正品のダブルディスク装置「DUODISK」を乗せたApple IIe(下)
これらの品は現行機種ではないだけに壊れると修理が利かない。したがってタイミング良く市場に出た完動品を手元に置いておかないといざという時にシステムがまったく使えない。その辺が苦労というか神経を使う点ではあるが、私は博物館に形だけ収めるといった見せ物としては興味がないので、実用はともかくきちんと動作する環境を維持し続けることに気をつけている。
Apple IIを目にするといつも思うのだが、当然の事ながら毎日Macintoshの前に座っているのとは受ける印象が大きく違う。
私にとってのMacintoshは仕事の一端であることも含め、一般ユーザーの方と比較すればハードやソフトに関して多くのことを知り得る立場にあるしそれなりの知識も吸収してきた。しかしある意味多くの点においてブラックボックスであることもまた確かである。
反面Apple IIは私にとってどこかアナログ的な感覚を持つ道具であり、まさしく「コンピュータを使っている」という気にさせる存在である。そのフロッピーディスクドライブがブートする音や「カタカタ」とデータを読み込む音でコンピュータがいま何をやっているかがわかるのだ。
ハードウェア面では千箇所以上ものハンダ付けを自身でやり、Apple IIのコピー基板を組み立てたこともあるし、ソフトウェア面ではプログラミングする際を含めてそのROMの内容やシステムのアーキテクチャなどをかなり深いところまで知り尽くした時期がある。したがってMacintoshと比較するまでもなく広範囲のことを知ってきた自負がある(すでに忘れかけているけど…笑)。
さらにApple IIとDOS 3.3といった環境はMacintoshならびにMac OS Xなどと比較することが出来ないほど単純ではあったが、当時の私たちはその隠されていた能力や魅力の発見にダイヤモンドの鉱脈を見つけるのと同じほど驚喜したものなのだ(^_^)。
私はこのApple IIでBASICプログラミングを筆頭に3Dをやり、シンセサイザをやり、グラフィックを楽しんだ。さらにワープロやビデオデジタイザや音声認識・音声合成そして一時的には表計算なども試みた。そうそう、いまでは手を出さないゲームもさまざまな製品を楽しんだものだ。
だからこのApple IIで「コンピュータとは何か」「コンピュータとの付き合い方」みたいなものを無意識にも体感してきたような気がする。だからこそMacintoshが登場したときにもその比較がよく分かっただけに大きな衝撃を受けた…。
そんなApple IIだが久しぶりにいくつかのソフトウェアを起動してみた。マシン本体は勿論だがディスクドライブも眠らせておくだけでなく、数ヶ月に一度でも動かした方が長持ちするものだということを経験から知っているからでもある。そして一番デリケートな5インチのフロッピーディスクも保存が悪いと磁気層が剥がれたりカビの繁殖でデータが読み取れないということもあるので保存には神経を使う。
ここでは戯れ言になるが、いくつか起動したソフトウェアを見ていただこう。
■AppleWorks ver.1.3 Apple Computer社 1985年
現在もAppleWorksという名のMacintosh用統合ソフトウェアがあるが、これはその元祖・祖先である。画面はその機能のひとつであるスプレッドシート(表計算)機能を表示したものだ。

※AppleIIeによるAppleWorksの表計算ソフト
Apple IIeは80桁表示ができたものの専用のグリーンモニタなど以外では滲んでしまい、コンポジットで出力したカラーモニタではまともに判別も難しい(笑)。これまた現在のExcelなどと比較もできないほど機能も貧弱なものだがVisiCalcの出現以降、この種のソフトの必要性を強く感じたものだが何しろ日本語が使えないものだから特別な用途にしか活用できなかったのである。
そういえば最初期の表計算ソフトはセルを区切る線を描けなかったので、はじめて見る方はこれが表計算ソフト?と思うのではないだろうか。
■ALIEN TYPHOON Broderbund Software社 1981年
いわずと知れた1970年代後半に爆発的に流行ったインベーダーゲームの亜流だが、このゲームでジョイステックをいくつ潰したものか…(笑)。
ともかくルールが単純でやればやるほど熱くなる要素を持つ優れたゲームのひとつである。今回も思わず遊んでしまった(^_^)。

※Macintosh用のソフトでも良質の製品をリリースしたBroderbund Software社がプロデュースしたApple II用のゲームソフト。いまでもついはまってしまう(笑)
■Flight Simulator II SubLOGIC社 1983年
本格的な?フライトシミュレータのゲームとしては最初期のもののひとつ。当時はこの程度のグラフィックととてつもなく遅い画面表示でも十分に楽しんだのだから面白い。しかし私は離陸は出来てもきちんと着陸できたためしがなかった(笑)。

※こうした古いソフトを見ると、アイデアは現在とほとんど変わっていないことにも気がつく(^_^![]()
■Music Construction Set ELECTRONIC ARTS社 1983年
Apple II本体以外に特別な機器類を使わなくても楽譜を入力して音楽を流すことができたそのことに驚愕した思い出がある。インターフェースも今から見れば簡素で玩具みたいなものだが、ビジュアルなそのインターフェースはその後の音楽ソフトに大いに影響を与えた。

※コンストラクションというアイデアが大変新鮮だった
■ZAXXON Datasoft社 1983年
SEGAのライセンスを受けたゲームだが、なによりもその三次元のグラフィックスが美しかった。いまでもその画面を見るとワクワクしてくる。

※いま見てもそのグラフィックスはなかなか美しく魅力的である
以上簡単に5つのソフトを見ていただいたが、これらの写真は今回新たに撮影したものだ。しかしApple IIの画面を始めて見る方達は「きったねぇ!」と思うだろうし「よくもまあ、こんな程度の解像度でゲームや仕事ができたものだ」と考えるかも知れない。当時の我々だって100%満足していたわけではないし自分でモニターに描いたグラフィックを「きったねぇ…」と思ったことも多々ある(笑)。しかし我々は常に時代の最先端の機器を使っているという自負と共に、ハードとソフトの骨までしゃぶり尽くそうとする熱意に充ち満ちていた。そして間違いなく、コンピュータというマシンを自分の手中に納めるために時間が許す限り没頭・熱中して大いに楽しんだ。
いま、Macintoshの最新機種を手にしている貴方は同様な熱意と感激を味わうことができているのだろうか?